魔王城にいらっしゃい!
俺と弟は例の『横暴な王様』に会う為に、茂みに隠れて細長く続いている道を歩いていた。
「兄ちゃん、遠いね」
「あーうん。まだまだ歩くからな。」
噂ではこの道も魔王の手下のモンスターが出るとかいう事だったけど、今の所ヘンなゼラチンみたいな生物としか遭遇していない。
そのゼラチンは布団を叩く要領でベシベシ叩いて虐めてやったら泣きながら茂みに帰って行った。
何故だか知らないけれど自分の中のS心‥、つまりカギャクシンがくすぐられた様な気がした。
そして黙々と歩き続けること一時間半。
ようやく俺達は城下街へと到着した。
「あーっようやく着いたな!」
「すごい時間かかったね、兄ちゃん」
「うん、てかお前‥、俺よりもピンピンしてるよな?」
「ね、早く行こうよ!」
あんなに歩いたにも関わらず大して顔に疲労感を浮かべていない弟に、俺は感心した。
歩幅だって俺よりずっと小さい癖に、息を切らして階段を上る俺をちょこまかと追い越して行った。
「あっオイ!危ないから先に行くなよ?」
「見て!でっかい店がずっとあるよ!」
興奮気味の弟を懸命に追いかけつつ、俺も同じ様に「随分と大きな街だなァ」という感想を抱くのだった。