魔王城にいらっしゃい!
ギギィ‥と古く大きな広間の扉が開かれる。

俺は弟の手を握ると、身の回りを警備兵に固められながら広間の中へゆっくりと進んで行った。

「なあ、凄く信用されてないと思わないか?」

こっそり弟に囁いてみるものの、キリッとした無視を決め込まれて少しも反応を得られなかった。

警備兵に心なし睨まれた。
うん、さすがの俺だって分かってるよ。ここで下手な事をすれば不敬罪であっちゅー間に首が飛んでしまうってことくらい。

だけども、俺はその、アレなんだ。

続に言う「右だ」と言われれば「左」に行きたくなる大のあまのじゃくなのだ‥。

まったくここの城の連中ときたら、人を服装で判断するのだ。

布団叩きを持っていたというだけで不振者扱いだし、やりにくいったらありゃしないない。短パンのどこが悪いと言うのだ!

危うく没収されかけた布団叩きは、俺のズボンのベルト穴に斜めに下げられている。

長い紅絨毯の敷かれた広間の最奥には、王の為の成り金趣味の大イスが置かれている。

「して、あの御方が国王にございます‥」

くれぐれも失礼の無いように。年置いた執事のような服装の男が俺たちに再度念を押した。

もう、分かったってーの!
ちゃっちゃと行って、そんな役割は辞退してしまえばいいのだ!

「国王様、伝説の勇者の血を引く者達をお連れ致しました。」

「ふむ、よかろう。しかしコレらは本物なのだろうな?」

「はっ!今の所最も有力だとされる情報に基づいた人選にございます!」

人選って何だ、人選って‥。

心の中では突っ込みを入れつつ、王の正面で方膝を付き頭を下げた。

「お前たちは勇者の子孫か?」

「はい、先日私どもの育ての親である叔父から、その様話しを聞かされました。」

「ふん‥どうだかな。それが真実かどうか確かめる術があるのだがなあ。」

王は長いじゃもじゃとしたヒゲを触りながら言った。

「人払いじゃ。この場には私とこの小汚い兄弟のみを残すように。」

人払いだって‥?
何だか俺は物凄く嫌な予感がした。

「もちろん、貴様らが本物の勇者の末裔でなかったとしたら、死刑台送りとなるがな‥ククッ。」

はあっ?何だとぉ!?
もしや、俺たちはこのまま殺されでしまうのか‥!?

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