魔王城にいらっしゃい!

「さて兄弟。貴様らにはこれから『天界の使者』との対面を行わせる。」

「てんかいのししゃ‥、?」

「平たく言えば天界人じゃ。この広間の上にはとある秘密の隠し部屋があるのだが、いや実にそこは多目的な部屋でなあ‥。」

今までで総計、36の死体が転がったわい。
国王は随分と楽しそうな調子で続けた。

(なんて酷い男だ‥!)

勝手な権力によって殺された哀れな者達。
そして俺達もその死体にめでたくも仲間入りするかもしれないのである!!

「さてさて確かココに‥、ポチッとな。」

モザイクタイルを装った隠しスイッチを押すと、天井が動いて穴が空き、そこから階段が下がって来た。

(ああ、頭がクラクラする。)

秘密の隠し部屋へと足を踏み入れながら、俺は心底家に帰りたいと思った。

そんな様子の俺が不満だったらしい。弟が真剣な顔で俺を叱咤する。

「兄ちゃん、駄目だよ。しっかりして。」

そしてなんと、弁慶の泣きどころに蹴りを入れられた!

「いィ‥ーってぇえっ!!バカ、何スんだあっ!」

さすがにこれには泣きが入る。

「しぃっ。まだ死ぬって決まった訳じゃないでしょう。」

勇者ならいいんだってば。
おじさんを信じていないの?
僕らは勇者の血を引いているんだろう?
だったら、何も問題ないじゃないの。

力強い言葉だった。
あれ、俺の弟ってこんな奴だったっけ‥?


「早く行かないと不敬罪になっちゃうよ」

「う、それは困る!」


_そうなのだ。
俺はその時、弟の瞳の中に緑色の光を見た気がしたのだ。


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