木苺の棘
私は、スタッフからタオルを
受け取り、お客様の洋服を
拭きながら見上げて謝る。

「ごめんなさい」

私の手に触れる、客の手。

「構わない、これぐらいなら
 すぐに乾くよ
 
 それよりも、さっきの
 話の続き
 
 今日こそは、アフターに
 付き合ってくれるね?」

こんな失態を曝して
断わることはできない。

「はい・・・」

「やっと、オッケー
 してくれたね」

大喜びのお客様に微笑む私。

だけど本当は、一秒でも
早く家に帰りたい。

もしかしたら、巽が部屋に
逢いに来てくれている
かもしれない。

「私もアフター
 ご一緒してもいいかしら?」
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