木苺の棘
たまき先輩・・・

あの口づけは

泡沫の露と消える。

消えてしまった方がいい。

もしも、あの口づけが
真実だったとしても

私達は、きっと
前へは進めない。

手を取り、未来を
見る事はできない。

過去から逃れることは
できない・・・

クリーニングから戻って来た
貴方に借りたまま、返せない
黒いジャケット。

ハンガーに掛かって
風に揺れる。

私は、その洋服に手紙を
添えて彼の事務所に
送り届けた。

もう二度と

逢わない方がいい。

それなのに・・・
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