木苺の棘
そして、遠くに聞こえる
緊急自動車のサイレンの音
に掻き消される、喘ぎ声。

俺は今、名前も知らない女を
抱き、俺を縛る過去の
ある想いから解き放たれる。

そして、俺は忘れようとした
お前の泣き顔を・・・

二人きりになることを避ければ
避けるほど、お前との距離は
近くなる・・・

「たまき先輩、雨・・・」

お前は、可愛い声で
いつも、俺を呼ぶ・・・

降り出した雨が地面を
打ち付け、跳ね返る。

「先輩、ここに居ちゃ
 濡れちゃう
 ・・・・・・
 先輩、たまき先輩?」
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