木苺の棘
たまき先輩は、私を
抱きしめる腕に力を込める。

貴方の腕の中から
飛び立とうとする
私を捕らえて放さない・・・

「駄目だ、アリス」

私は、貴方の耳元で謝る。

「ごめんなさい」

先輩の手が解かれ、私は
全速疾走で夜の街を駆ける。

貴方に触れたい
巽に触れたい、一心で・・・

迎えに来た車に乗り込もう
とした巽は、コツコツと駆ける
ヒールの音に気がつき
ドアの前で、両手を広げた。

そして、その腕に飛び込む
私を抱き留めてくれた。

私は、夢中で巽に
しがみ付き、彼の名を
何度も呼び続けた。

「タツミ、タツミ・・・」
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