木苺の棘
『ごめんな、アリス』

今、確かに聞こえた

巽の声・・・

私は驚き、携帯電話を
床に落としてしまう。

私は足元・・・爪先
その一点を、じっと見つめ
両手で耳を塞いだ。

『ごめんな・・・』

「やめて
 何も聞きたくない
 聞きたくないよ・・・」

これは、全て、嘘・・・

これは、全て、夢・・・

巽と私が、育んだ愛は
この手を放れ

脆く、儚く

消えた・・・

愛した男は、私の前から
いなくなる。
< 209 / 674 >

この作品をシェア

pagetop