木苺の棘
だけど、私の瞳に
あなたは映っていない。

映っているのは、巽・・・

「あなたがほしい」

『お前がほしい』

瞳を閉じ、触れ合う唇に
この世にはいない
愛しい人を想う・・・

私は、この人を
愛していない。

それなのに嬉しい涙が
溢れる。

暗闇で私を抱く、この男性
の中に、巽に似ている部分を
見つけては、ほっと安心する

私は、この途轍もない
寂しさから逃れる為に
人の肌を求め
温もりを求めた。
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