木苺の棘
「あるよ、最前
 お嬢さん、可愛いから
 安くしとくよ」

「最前はいいです
 後方で・・・」

「君、おもしろいね
 最前はいいって・・・
 
 ファンじゃないの?」

「いえっ、ファンです」

真剣な表情で答える私に
小父さんは、笑い出す。

「定価で最前
 売ってあげるよ
 ほらっ・・・」

最前列のチケットを
私に差し出す。

一番前だなんて
絶対に駄目。

「いえっ、いいです
 本当に困ります」
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