木苺の棘
「ああ
 それが一番いい」

漣の言葉に、私の心は
落ち着きを取り戻していく。

真剣に謝る以外
小細工はいらない。

「アリス
 ひとつだけ言っていい
 見てみろよ?」

漣が時計を指差すと
時間は、もうすぐ正午。

「それにしても、お前
 思い出すの遅くない?」

「本当だね・・・
 寝すぎちゃった」

貴方は、頭を左右に振る。

「違うだろう、アリス?」

甘い瞳は、私を捉えて
放さない。

その瞳は、私の言葉を
待っている。
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