木苺の棘
「ううん
 かっこいいね」

貴方は、悪戯に微笑む。

「言ってろよ」

華奢な体を包むのは、たった
一枚の薄いスリップワンピース

ワンピースの肩紐が何度も
ずれるのを気にする私の指先

貴方は、そんな私の肩に
ジャケットを羽織らせてくれた

「いいの?」

「ああ」

「ありがとう」

大好きな漣の香りに包まれる

巽の香りよりも、もっと
優しい香り。

「次に逢う時
 直に、返してよ」

その言葉に、驚く私。
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