木苺の棘
時雨・・・

ちょうどよいときに降る雨

漣の引力に引き寄せられた
私は、貴方の口づけを
瞳を開けたまま、受け入れる

貴方の閉じた瞼から覗く
その長い睫毛に触れたい。

私の唇から貴方の唇へと
移る、色彩。

赤い紅色が、今度は
貴方の唇を彩る。

美しい人・・・

その唇に、そっと指先で
触れる私。

「レン、雨、降ってる
 
 動物園は?」

「すぐに止むさ
 
 それに
 動物園は逃げない」

貴方の太股の上に
向き合って私は座る。

赤い口紅に白い肌の漣・・・
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