木苺の棘
その女の子は、尻餅をついた
が泣いてはいない。

ほっと安心する私をよそに
漣は、さっと女の子を
立たせてあげる。

「大丈夫、痛くない?」

「うん」

「そうか、良かった
 転んだのに泣かないなんて
 お前、すごいな」

そう言って、女の子の頭を
撫でてあげる漣の横顔は
とても優しげで、彼は素敵な
お父さんになるだろうと
私は思った。

「おじちゃん、ありがとう」

「おいおい
 おじちゃんかよ」

漣と私、太陽の下
大きな声で笑い合う。

そして、繋ぎ合う手。

私達は、こうして人目を
気にする事無く、デートを
重ね、外で大きな口を開けて
お弁当を食べて、大きな声で
笑って、手を繋いで街中を歩く
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