木苺の棘
漣は、ありすにメールを
送信した。

『話したい事がある
 今夜、どうしても逢いたい
 連絡を待ってる』

待ってる・・・

その頃の私は、すぐに帰る
つもりで、お財布だけを手に
握り締めて近くのスーパーへ
買い物に出掛けていた。

そう、こんな大切な日に私は
携帯電話を自宅に置いたまま
漣との連絡を絶つ

通いなれた店内、欲しい物が
どこに置いてあるのかすぐに
分かる私は、籠を持ち
お目当ての物を求めて
売り場の前に立つ。

そして、トイレットペーパー
に手を伸ばすと、私の名前を
ボソっと呼ぶ声が聞こえた。

「羽山ありすさんですね?」

伸ばす手を戻して、驚く私に
その男性は、辺りを見渡して
言う。
< 449 / 674 >

この作品をシェア

pagetop