木苺の棘
貴方があの時、あんなにも
苦しそうな表情を浮かべたのは

私を愛していたから・・・

私は、貴方の想いに気づけずに

『貴方が愛しているのは
 
 私じゃない』

恋に破れ、傷ついた私は
貴方の愛を独占する八重を
心から憎いと思った。

八重への嫉妬心で雁字搦めの
私は、苦しみに耐え切れず
矛先を八重に向けた。

『アリスちゃん』

大切な親友を私は傷つけた。

二人から距離を取った頃の私
悉(ことごと)く
八重を拒み続けた。

八重と同じ時を過すことが
窮屈で窮屈で堪らず
彼女に背を向けた。

その度に、八重は
悲しい瞳で私を見つめた。
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