木苺の棘
遠く、愛しい人の姿が映る。

「ここでいい
 停めて」

停車するタクシーから
降り立つのは、漣。

アリスは誰かと話している。

誰と、話してる?

近づくにつれ、漣にまで
聞こえる声。

彼女は、あの日の八重のように
思いつめた表情で

八重と同じ言葉を私に告げた。

「お願い
 わたし、苦しくて
 
 わたし、苦しい」

『ワタシ、苦しい
 レンがアリスを選ぶ事?
 ワタシ、耐えられない

 ワタシ
 今すぐ
 楽になりたい
 死んでしまいたい』

あの日の、八重の言葉・・・
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