木苺の棘
「ねぇ、そうしましょう」

私はこの時、本当に共有
できればいいと思った。

私の耳から離れる、手。

彼女の声が聞こえた。

「馬鹿にしないで
 共有するって何?

 何も知らない
 子供だからって
 上から目線はやめて」

高価なシフォンドレス
甘い香り、綺麗な指先
真赤な口紅

大人の女性に見下された
と感じた捺は、言う。

「レンさん、私は必ず
 あなたを手に入れる」

真っ直ぐな彼女の瞳は
私の瞳を通り越して
見上げる。

「レン・・・?」

振り返る私は、見上げる。

そこに、貴方が立っていた。

悲しい瞳・・・
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