木苺の棘
「さむい・・・」

冷たい木枯らしが吹く中を
ジャケットの襟を立てて
私は駆ける。

街並みはもうすぐ
クリスマス一色になる。

寂しい・・・

寂しいよ、レン。

追加公演・2Days
最終日・・・

今日は、クリスマスイブ。

瞳に飛び込んでくるほどに
鮮やかな真赤なロングコートを
腕を通さずに羽織り、ヒラリと
靡かせて、漣はステージに
現われた。

最初、ファン達はステージ
センターに立つ、漣の変貌を
遂げた姿に驚き、戸惑う。

黒髪ロングのウィッグに
シルクハットを深く被り
顔を隠す。

漣なのかと、疑うファンを
尻目に、マイクに唇を近づけ
漣は囁く。
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