木苺の棘
私は、敢さんの胸に頬を寄せて
どうして、言葉が詰まって
しまったのか考えていた。

『私は貴方を
 ・・・愛していない』

愛していないと言えない。

漣・・・

私、自分が分からない。

誰を愛しているのか?

家路に着いた私は
携帯電話を見つめる。

ここへ戻ってくるまでに
幾らでも、漣に逢いたいと
電話をかけることはできたのに

私が、逢いたいと伝えれば
貴方は必ず、すぐに
逢いに来てくれる・・・

その腕に、抱きしめてくれる

それなのに、私は結局
貴方に、電話をかけることが
できなかった。
< 578 / 674 >

この作品をシェア

pagetop