木苺の棘
私は眠れずに、朝になるまで
電話をかけなかったことに
ついて理由をあれこれと
考えた。

彼女(捺さん)と、漣を
奪い逢う事

どうしても踏み出せない。

全てを曝け出して
泣き喚いて貴方に縋る事

私は、きっとできない。

彼女が、亡くなった八重の
面影を持つ以上

『共有しよう』

その言葉しか、私には
思い浮かばない。

本当は、違う・・・

彼女が八重の面影を
持つ事だけが原因じゃない

原因は、他にも・・・

形見・・・

巽の香りが、私から薫る。

私から、香る。
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