木苺の棘
翌朝・・・

小さなゴミ袋を手に持つ、私は
エレベーターのドアに映る
自分の姿に呆れ果て、俯き
指先で、くっきりと浮き出た
目の下の隈に触れる。

自分以外の人の気配を感じた
私は、右手で顔を隠した。

開かれる、入り口のドア

すれ違う・・・

地面を踏みしめる、大きな靴が
私の瞳に映るのと同時に
聞こえる、声。

貴方の声・・・

「アリス」

「レン?

 どうして、ここに?」

驚く、私・・・

「まさか、昨夜から
 ずっとここに?」

「いやっ、さすがに
 寒空の下
 それは、無理」

貴方は、私の手からゴミ袋を
取り上げ、定置の場所に
捨ててくれた。
< 582 / 674 >

この作品をシェア

pagetop