木苺の棘
そんな私を後ろから
抱きしめる人がいた。

ううん

抱きしめるというよりも
全、体重を私にかけてくると
言った方がいいかもしれない

その体の重さに、私の体は
ふらつくが、私はピンヒール
で大地を踏みしめて立つ。

私の白いコートを握り締める
その人の左手は赤く染まって
いた。

血の匂い・・・

「キャ・・・」

声を上げて叫ぼうとした私の
口元を塞ぐ、大きな手。

耳元で微かに聞こえる声。

「アリス、俺だ、イサミだ
 叫ぶな
 誰にも気づかれたくない」

血の香りに、私の体は震える
< 594 / 674 >

この作品をシェア

pagetop