木苺の棘
昨夜、病院に担ぎ込まれ
入院しているはずの
敢さんが、どうして・・・

「どうして、ここに?」

怖い・・・

振り返るのが、とても怖いの

左手の血・・・

「血が、ついてる・・・」

「アリス、聞いて
 お前にしか頼めない
 俺をここから逃がして」

救急車のサイレンの音に
パトカーのサイレンの音が
重なり、その音はどんどん
近くなる。

気が狂うほどに、煩く

この耳を劈(つんざ)く。

もう一度、私は高く手を掲げた

停車するタクシーに
二人は乗車する。

その姿を見つめる、露歌さん
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