木苺の棘
それは全て、私が悪いの。

貴方とひとつになろうと
思えば、いつでもなれた。

それなのに、私は

八重の死を、この実に
捲きつけて、貴方への愛を
胸の奥底に閉じ込めた。

あの時、既に

腐らせてしまった、愛・・・

報われるわけがない。

貴方の後姿を見つめながら
私は、車の座席にリングケース
を置いた。

バタン

閉まるドアの音。

私は、走り出す・・・

どこへ向かうでもなく。

私は結局、逃げ出した。
< 626 / 674 >

この作品をシェア

pagetop