木苺の棘
私は、リュックを肩に提げて
駅前で貴方が来るのを待つ。

「モカちゃん」

その声のする方から
歩いて来るのは、露歌さん。

「ツユカさん
 今から出勤ですか?
 
 早くないですか?」

「ううん、今日は休み

 これから
 イサミに会いに行くの」

露歌さんは、紙袋を
持っていた。

彼女は私の耳元で
こっそりと話す。

「留置所に会いに行く

 なんて、大きな声では
 言えないわね」

「イサミさんは元気ですか?」
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