花嫁の証

「もし…もし…
奇跡が起こるなら…」


あたしを…
あたしを…



人のままで…



「連れていかないで…
此処にいたい…」



涙が一滴流れた




「……ならいろよ」




後ろから聞こえた
声に肩をビクッと震わす


あたしは慌てて
涙を拭いて



「なーんて!
言ってみただけだし!」



笑顔で空夜君に走り寄る



「お前な…」


空夜君は何か
言いたげにあたしを見る



「ほーら!帰ろう!
まさか心配して来て
くれたの??」



あたしは空夜君の
先を歩く




「そうだ」



空夜君の言葉に
立ち止まる



嘘……

冗談だったのに…



「いいか
お前を護ってやる

俺が持つ全ての力で
ヴァンパイアだろうが
なんだろうが…

砕く剣にも盾にも
なってやる」



空夜君が近づいてくる



ドキン…


心臓が煩い


空夜君は何を
言い出すんだろう




「お前が狂いそうに
なったら…

俺が何度だって
引き止める」




嫌だな…
あたしは…平気なのに




涙が出るのはなんで?



あぁ…
そうか…



誰かに気付いて
欲しかったんだ



不安でたまらなくて…




縋りたかった




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