自伝
「綾…今日は何で来たの?」


「車ですよ」


「良かった。俺、車売ったんだ」


「大丈夫ですよ。帰りは送りますから」


あの後、住んでいた家も車も奥さん達の為に手放していたことも


池袋の会社を辞めた後破産寸前だった事も


全部知ってた



「どんな車?」


「ピンクのキャロルです」


「綾っぽいな(笑)」


「でしょ(笑)」


その後は自然の流れのままに…


ホテルのソファに腰掛けた早瀬さんが、私に手を差し出して



『おいで』




胸が熱くなり、言葉では言い表す事が出来ない気持ち



変わらない温もり



また、振り出しに帰った事は2人とも良く分かってた…



ただ、違うのは私にも家族がいること…

何度も確かめ合う私達に付けっぱなしのテレビだけが、優しく語りかけてた。
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