自伝
私達の未来をつなげてくれた


あの、狭い螺旋階段のマンションと桜並木に包まれたアパートをそれぞれ離れて

春陽の通う保育園の近くに広くてゆったりとしたマンションを借りて3人の新しい生活が始まった。

年が明けて桜の花がいつもより早く満開を迎えた日に


私達は4人家族になった。


待ちわびていた男の子が産まれた


沢山の人にその誕生を祝福され


それから3年間はごく普通の幸せな家族でいられた。


桜の季節に産まれたから


桜夜(さくや)と山本さんは名前をつけた赤ちゃんも


やんちゃな3才で


春陽は小学生になった。


「なあ…引っ越さないか」


「え?どこに」


「お前の実家のそばに行けばさ、子供達のこと多少は見てもらえるじゃん」


「私が実家の親嫌いなの知ってるじゃん」


「そうだけどさぁ…少なくとも今よりは楽だろ?」


「…春陽が可哀想じゃん、転校だよ」


「転校なら、俺も沢山したぜ」


「あなたはあなたでしょ。」


納得しない私を強引にねじ伏せて


実家のそばのマンションへ引っ越した。

前よりも部屋も狭く家賃も高くなった。

倒産した会社はあれから数週間で決着がつき


結構な金額をもらうことが出来た。


桜夜が産まれた年に駅2つ先の会計事務所で働き始めた。


実家のそばへ引っ越せば当然、通勤時間も長くなるけど、頑張って通い続けた。

あの問題が起こるまでは…
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