自伝
そんなお父さんの顔色を気にしながら育った甥っ子は


不思議と道を踏み外す事はなく


素直で、良い悪いがハッキリ言える自分をしっかりともった男の子に成長していた。


家族で交代でお見舞いへ行き


甥っ子のそばにいてあげた。


夏も本格的になり暑い日が続く中


消費者金融で働く友達から電話がきた。

「見つけたよ」


「ありがとう!で、電話番号わかるの?」


「うん、いい?080…」


行方不明だったお兄ちゃんを捜したのだ

案の定、ある金融会社から借金していたため、データが見つかったわけで


本当は駄目なんだけど友達に事情を説明して調べてもらった。


早速、お兄ちゃんへ電話してみた。


「只今、電話に出る事が出来ません発信音の後に…」


「もしもし?綾だけど、透(とおる)が今癌で入院してます。多分もう…必ず連絡下さい」


癌は既に肺やリンパに転移していて、もう抗がん剤も無理なくらい体力は落ち


片方の肺は完全に真っ白になり残った肺にもわずかな部分を残してあとは真っ白になっていた…


高濃度の酸素マスクと痛みを忘れるためのモルヒネが


甥っ子の頼みの綱だった


その夜


お兄ちゃんから電話がきた
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