自伝
しばらく黙った後


全然思ってない口調で


「恨んでるよ」


涙が一気に溢れた


「ありがとう…ありがとう…ね」


そのまま電話を切った。


そう


ずっと聞きたかった

いつまでも心のどこかで消えない悟史さんの思いを


無くすために


私を憎む言葉を


あなたの言葉で言われたかった。


やっと


本当に前に進める気がした


それ以来決して私からも


悟史さんからも連絡を取ることはなくなった。


悟史さんとの事で山本さんの浮気のことは


私の中でおあいこになったから口に出す事もなくなった。


あわただしく引っ越しを済ませて


一週間の研修を2人で受けて


1日中一緒にいる毎日になり


意見の食い違いや衝突が増えた。


桜夜を保育園に連れて行き


他のお母さん達と立ち話する暇もなく


店と保育園と家の行ったり来たりが1年続いた。


保育園に行くと桜夜のお友達はみんな


「桜夜のママだ~」


て、覚えてくれてるのに


私は子供達の名前とその子のママがどの人なのかも分からないままだった。


帰りもいつも保育園が終わる間際だったから


目が合えば「お疲れ様(笑)」ぐらいしか言葉を交わした事がなかった


自転車をこぎながら

「さっきのママは誰のママなの?」


「マサシくんのママだよ」

そうやって桜夜に教えてもらってた。



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