自伝
仕事中のデートは変わらなかったから、帰りが別なのはあまり、気にならなかった。


そうこうしているうちに、あっという間に福島へ行く日が近づいた。


早瀬さんとランチを食べながら


「来週かぁ福島…」


「早いですよね」


「合宿先の電話番号教えてよ」


「番号は…あぁパンフレット持ってるんで、ちょっと待って下さいね!」

私はカバンからゴソゴソとパンフレットを出して早瀬さんに渡した。

早瀬さんはパラパラとパンフレットを捲りながら


「少し行けば、海だね。教習所が12日から3日間休みだから、楽しんでおいでよ」


「そーなんですよね、ちょうどお盆休みに重なるからその分普通の合宿より日数がかかるのが問題ですよね」


「まぁ、ちょっとした旅行気分で、いいじゃん(笑)」


「そうですね(笑)
新しい出逢いもあるかもしれないし」


「おい…頼むよ…」


「冗談ですよ」


「綾は明るいし、積極的だから見張ってないと、どこ行くか分かんないタイプだからな」


「そうですかぁ?」


「そうだよ(笑)まるで、風船みたいだ…手を離すと何処に飛んで行くか分かんなくて、しかもやっと見つけたと思っても今度は手の届かない場所に居て、まっ
自由人的な所が男は必死になるかもな(笑)」


「私って…風船ですか…。でも、大丈夫ですよ(笑)」


出発の日、上野駅へ向かうと改札口に早瀬さんがいた


「早瀬さん!?」


「忘れ物ないか?」


「わざわざ来てくれたんですか?」


「当たり前だよ」


「忘れ物は多分ないです!じゃあ、行って来ます!」

そう言って改札口に入ろうとした瞬間


「綾!!」


腕を引きよせて


「キス…していい…かな…」

そう言って優しくキスしてくれた。


改札口のフロアには大勢の人達がそれぞれの行き先に向かって歩いていた。
巨大なパンダの置物が私達を見下ろしてた。

ちょっと幸せな気持ちのまま、電車に乗り福島へ電車は動き出した。
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