四十六億年の記憶
「……。わたしにはあなたの考えていることがよくわからない」
彼女は頭を掻いていた手を下ろして目の前に置かれた、すっかり氷が融けてしまって薄くなったミルクティーを煽る。
「今でもわたしはあなたのことがよくわからないよ」
それだけ言って彼女は立ち上がった。
小さく伸びをして椅子の上の鞄を掴む。
「さて、家の門限が近いのでそろそろ帰るとしようかな」
家も遠いことだしね、と言って先ほど彼女が飲み干したミルクティーと同じ色のスカートを翻し、店から出て行った。
一人残された私は今日も彼女のミルクティー代を支払わなければならないようだ。
「たまには自分の代金くらい自分で払ったらどうかね」
ぼそりと呟いたその言葉はまわりの喧騒に掻き消されて誰にも届くことはなかった。
一人で二人掛けの席に座る私を、傾きかけた赤い夕日が照らしていた。