四十六億年の記憶
喫茶店
「……昨日ここに二人で居たのをクラスの女子に見られたのだけど」
いつもの喫茶店の窓側の二人席に座っていた私に、彼女はいきなりそう言った。
「……。まあ、座ったらどうだ?」
彼女に、私の向かい側に座るよう促す。彼女は椅子を引いて腰掛け、水を持ってきた店員にアイスミルクティーを注文して、制服のブレザーを脱ぐ。
どうでもいいがまたミルクティーか。
「今日は遅かったな。いつもより授業が長引いたのか?」
「……授業はいつもどおり。クラスメイトに質問攻めにされていたんだ。あなたとの事を!」
最後だけいやに語気を強めて言った。
「私とのこと?何も無いではないか」
本当に何も無い。私は彼女の名前すら知らないし、彼女も私の名前どころか私が何かも知らないというのに。