×隣のヤンキー少女×
マンションまでは数分だが、さすがに気まずい。
俺は不機嫌な理由を聞いてみることにした。
「…なあ亜美、なんでそんな機嫌わりぃんだ…?」
「……別に。話しかけんな」
いつも以上に冷たい言葉で返される。
だがこれで挫ける俺ではない。
「そんなの無理。
俺は亜美と喋りてぇもん」
「…うざい」
「なんで そんな「あたしと帰る必要、ある?」
「は?」
突然、キッとこちらを睨んだ。
そして亜美は言葉を続ける。
「さっき一緒にいた女とそのまま帰ればいーじゃん!
いちいちあたしに 関わる意味が分かんないっ」
「………亜美」
「別に女なんて あたしじゃなくてもいるだろ!?」
………もしかして、これは。
「…妙に女慣れしてるし、ナルシストだし、うざいし、
急に……キスとかしてくるし…」
「………」
何かが切れたみたいに、言葉が止まらない。
亜美は俺から少し離れ、雨に濡れても気にしていない。
「…何が言いてーんだよ?」
なぜ亜美がこんなにもイラついているのか、俺は気付いている。
でも言いたい事が何なのかは分からない。
「あんたなんか……
あんたなんか、紀理じゃないっ!!」
「……! おい、亜美!」
亜美はどしゃ降りの中、駆け出した。
「…………亜美の中の俺は昔のままかよ…」
俺は傘を差すのをやめ、雨にうたれながら呟いた。