×隣のヤンキー少女×
突然の大きな音に、体がビクッと反応した。
ドアの向こうで名前を叫んだのは、どうやら今 自分の頭の中を占領している人物。
つまり、アイツ。
あたしは渋々ドアを開けた。
「亜美!」
「……んだよ?
――! てかあんた…」
すぐ追い返してやろうかと思ったのに…
「…なんでアンタもずぶ濡れなんだよ?
傘あったはずじゃん!」
もう、コイツの考えてることが分かんない。
いつもいつも。
「傘なんてさせるワケねえじゃん」
「……?」
「…亜美のあんなカオ見てから、普通に帰れるわけ ねえだろ?」
そう言った奴の表情は真剣で。
言葉につまり、何も答えられなかった。
「亜美、言えよ」
「……………何を」
コイツの言動は、いつもあたしを困らせる。
「“好き”って」
「……は?」
いつもみたく、ふざけているのかと思ったのに…
コイツの目は真剣なままだった。
「冗談よしてよ? あたしがそんなこと…
「俺のことが気になってるから、ヤキモチ妬いてたんだろ?」
「………っ!」
手首を掴まれ、壁まで追い詰められた。
片手だけなのに びくともしない。
「…認めろよ。
いつまでも、昔の俺と比べてんなよ亜美…」
そう言った奴の顔は、少し切なそうで、あたしの心に突き刺さった。