ダブルハーツ


体を固くした。
他人の男の人に抱き締められるのは初めてだから。
初めて知った。お兄ちゃん以外にもこんな暖かくて、胸の中が大きい人がいるなんて。


「遠川さん……もう少しだけこうしていてもらえますか?」

「うん、いいよ」


落ち着く。
とても安らかな気持ちになって、私はその晩しばらく遠川さんの胸に寄せていた。
昼間に雨が止んだ、静かな夜のことだった。
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