ダブルハーツ
「なんで!なんで!貴方がこんなところにいるのよっ!」
その人の名前は、桐人(きりひと)さん。母の甥に当たり、そして私の初恋の人でもあり――夕夜兄さんの恋人だった人。
バシバシ叩いてるのに、抵抗するどころか桐人さんは口を結んで耐えている。
まるで自分のせいだと、解りきってるように。
「明葉ちゃんっ!」
「桐人くん、さぁっ!今のうちに帰りなさい!」
お母さんが促しに会釈をする。
一度何か言いたげな目の色をこちらに浮かべたが、彼は車内へ乗り込んだ。