王子様の秘密-下-



「…桜木?」



息を切らせて昇降口に着くと、後ろから声をかけられた。



「…く…九条君…っ」

「どうした!?
またなんかされ…」

「ち、違う…の」



部活途中だった九条君は、ジャージ姿のままだった。



「悪いけど、ちょっと抜けるな」

「分かった、時間なら気にするなよー」



九条君が近くにいた部員らしき人に断って、私の方へ走り寄って来た。



「桜木っ」

「…グスッ…九条君…っ
どうしたらいいか分かんないよぉ…っ」

「ちょっと、場所変えよう」

「…う、ん…」



九条君に言われて、私達は近くの空き教室に入った。

グランドからサッカー部と野球部の声が聞こえる。

静かな私達の周りだけ、別世界に切り離されたみたい。



「…何があったか、言ってくれる?」

「……うん」



私は近くのイスに座らせられ、九条君もその向かい側のイスに座った。


私は…

成弥や神崎さんの名前を伏せて、泣きながらも大まかに話した。


話している間、九条君は静かに聞いてくれて、話終わった後に笑顔を向けてくれた。


この笑顔が、どのくらい私を楽にさせてくれたことか…


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