王子様の秘密-下-
「…何やってんだ?」
人気のない廊下に、低い声が響いた。
あまりにも怖くて…
鳥肌が立つくらいオーラが出ていた。
「桜木ちゃんっ!!」
そのオーラを放つ人の後ろから、焦った顔を覗かせたのは…
……恭平君…
「陽菜っ!!」
一瞬にして、さっきの怖いオーラが消え、慌てて私の名前を呼んだのは…
張本人の“成弥”。
「大丈夫か!?」
「…あ…うん……」
成弥が慌てて駆け寄って来た。
そして、先輩を睨んだ。
睨まれた先輩は、罰の悪そうに、右手を下げた。
小声で“ごめんなさい”と呟いたのが聞こえた。
それは、私に言ったのではなく…
成弥に向けられたものだと思った。
「神崎、その手放せよ」
「……………」
神崎さんの私を掴んでいた手が、力をなくして離れていった。
ピリピリした空気が流れていた。
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