王子様の秘密-下-
「九条良い奴だね」
「うんっ」
九条君は、九条 隆平君。
うちのクラス委員。
頼りになる人だ。
「陽菜、心当たりとかないの?」
「うん…
私、何かしたのかな…?」
体育の帰り道。
ジャージをバックにしまって、栞と廊下を歩いていた。
「うーん…
まっ、何かあったら言ってね?
友達なんだから」
「ありがとっ」
イジメの黒幕は、すぐ近くまで来ていたんだ。
「それにしても、今日の体育さぁ…」
私は、気付くのが遅かった。
「…っきゃ!!」
「え?陽菜?」
足に何かが引っ掛かって、私は転んでしまった。
廊下に手をついた私の頭上から、くすくすと笑い声が聞こえた。
「だっさぁ~」
「ひろみ、やりすぎぃ」
“ひろみ”?
神崎…さん?
私が顔を上げる前に、栞が怒っていた。
「あんた、椿谷の…っ
陽菜に足かけたでしょ!?」
「何言ってるの?
言い掛かり?
ひろみ怖いんだけどぉ…」
「なっ」
私は慌てて立ち上がった。
栞は巻き込んじゃいけない、そんな気がしたから…
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