王子様の秘密-下-



「九条君、ありがとう」

「…何言ってんだよ。
あんなの見て見ぬフリできるわけないだろ?
桜木、あんなのに負けんなよ」

「うんっ
大丈夫だよ!」



九条君は笑っていて、私は心強く感じた。

それから私達は、授業にギリギリになり、一緒に廊下を走った。




この日は、これだけで済んだ。


だけど、もちろん。


“イジメ”は、これだけでは済まなかった。


靴には悪口を書かれた紙が丸めて入れられていた。

机に入れていた教科書は、放課後まで消えて、見つかったときは、ボロボロにされていた。

すれ違いざまに言われる悪口。

見知らぬ人からも言われるようになった。


…ここまで悪化するなんて、私は思いもしなかった。



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