王子様の秘密-下-
第20話
[陽菜ver,]
毎日続いていたイジメは、悪化することがなくなった。
むしろ、前よりマシになったと思うくらいだ。
そのかわりに…
「…し、死んだぁ…」
「赤点?」
「ばっかりだよぉ…」
「勉強どころじゃなかったしね…
あれのせいで」
栞が怒ったように言った。
イジメで精神は傷付けられても、勉強だけはおろそかにしてはいけない…
そう思っていたのに…
教科書ノートとも、ずたずたにされて、勉強できなかった…
なんて、言い訳が通じるはずがない。
「桜木」
「…はい」
「後で職員室に来なさい」
ほとんどの教科の先生から呼び出しされる。
それを見て、クスクス笑うのは、私に悪口を言っていた女の子達。
「桜木っ」
「…九条君?」
「大丈夫か?」
「うん、もう平気。
それより今は心配する方があるし…」
平気。
うん、だいぶ平気だ。
…イジメが落ち着いてきたのが、成弥のおかげだったなんて、私は知る由もなかった。
「あ…それ?」
「うん、悲惨すぎた」
「良かったら、勉強教えようか?
こう見えても俺、少し成績には自信ある方だし」
「ほんとっ?」
「うん」
「ありがとーっ」
このときの私は、九条君といることが安心できて、嬉しかった。
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