空の彼方の君へ。



「優斗、ごめん・・・」



いきなりそう言った疾風に私は目を見開いた。


『ごめん』?


疾風はまた私を見つめた。



今度の視線は、とても悲しみに揺れた瞳で。



「沙希、好きだ・・・っ」


静かに、そう言った。


きっと、疾風は罪悪感でいっぱいなんだと思う。


だから、先にごめんって言ったんでしょ?


疾風は優しいから、優斗を、お兄ちゃんを裏切ったと思ってるんだよね?



でも、きっと優斗なら、バーカって言いながら微笑んでるよ?



だから、疾風は苦しまなくていいの。



私1人が苦しめば、それでいいの。



「ごめん、疾風。私は優斗のことを忘れられない」


「うん、わかってた。でも俺は、沙希に好きな人が出来るまで諦めないから」


疾風はすっきりしたように微笑んで、かっこよく去って行った。




< 62 / 108 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop