誰を愛してるの…
「さぁ、そろそろ行きましょう?」


「そうだね、そろそろ行こうか」


飲み干した缶をゴミ箱へ入れて車へ戻る途中…


駿の携帯が鳴った


「ごめん、先に車行ってて」


車の鍵を受け取り私はゆっくりと駐車場へ向かった。


「あら?不思議ね…さっきも、ここ歩いたわ…」


立ち止まり周りを見回した。


「駿!…駿!?」


「…」


「何で?」


「どうか、しました?」


はっとして、振り返ると小綺麗なお婆さんが1人たたずんでいた。


「道が分からなくなってしまったみたいで…あのぉ…駐車場へは…」


お婆さんはにっこりして


「私も今散歩から帰る途中なの、駐車場を通るから一緒に行きましょう」


優しくうなずきながらお婆さんは歩き始めた。


「あのぉ…」


「結婚されてるの?」

「はい…でも何で?」

「指輪の跡だけ日に焼けてないからよ」


左手の薬指を見ると7年間はめ続けた指輪の跡が白く、まるで指輪をはめているみたいだった。
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