恋心ー番外編ー
「大丈夫ですか?」


その時、声をかけてくれたのが、鈴木先輩。


「あっあの、試験…俺…。」


あせってうまく話せない。

「一回、深呼吸しようか?」

「えっ。」


「はい、一緒に。
はいてー、すってー。
もう一回いって見よう。
はい、はいてー、すってー。」


目の前で、手を大きくひろげて深呼吸を繰り返す黒眼鏡の変な女の子。


俺はただ見つめた。


「落ち着いた?
じゃ、受験票みせて。」


「あっ、はい。」


「今ならまだ注意事項の説明中だから試験間に合うからね。
さぁ、元気に行こう。」


俺の手を握って、試験教室まで連れてってくれた。


俺はそのあと落ち着いて試験を受けて、無事合格。



この日から俺はこの女の子の事が毎日頭にうかんだ。


一目惚れだときづいたのはだいぶ後だった。


残念ながら、運命の出会いだったのは俺だけで、鈴木先輩は案内係の仕事をしただけのことだった。
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