かけがえのないキミへ
とっさに出た『映画』という言葉。
観たい映画などないし、映画はあまり好きでもないのに、なぜかこの言葉が出てしまったんだ。
『映画!いいね!』
梨花は手を叩いて俺の提案に賛成をする。
竜也の方を見ると、笑顔になっていたので、賛成で間違いはないだろう。
何で否定しないの?
否定ぐらいしろよ。
『あやちゃんに聞いてみないとわかんねぇけど、一応映画っていうことで!』
竜也は前へと向き直し、大きく一歩を踏み出した。
今の俺は複雑な心境で、『なんで?』と思っている。
映画?
まぁ、映画でいいかな、なんて自分の発言に納得した自分もいた。
なぜならば、映画の上映中、緊張なんてしなくて済むから。
苦しい想い、しなくていいから。
『映画、楽しみだね!』
無邪気に笑う梨花に対し、俺も笑顔を見せる。
そして、待ち合わせの時計台へと着いた。