かけがえのないキミへ


綾音はぺこっと頭を下げ、笑顔になる。
俺もつられて笑顔になる。


『行こ!怜!!』


梨花が俺の手を引っ張り、竜也たちがいる時計台へと足を運ぶ。
綾音は梨花の存在に気づき、無表情で梨花を見ていた。
いや違う。俺たちを見ていたんだ。

綾音の視線が、俺と梨花を繋いでいる手に集中していたから。


見られたくなかった。
こんな姿。
綾音に、梨花の存在を知られたくなかった。

これって都合がいいのかな?


『初めまして!怜の彼女の梨花です!』


梨花はとびきりの笑顔で綾音を見る。
綾音はその笑顔に圧倒されたのか、少し戸惑った様子を見せた。



『安田、この子は綾音っていうんだ。あと…ちょっと喋れないんだ…』


竜也は綾音の肩を抱えて抱き寄せた。


『喋れ…ない?』


綾音は口をぽかんと開けて綾音を凝視している。

俺はずっと綾音ばかりを見ていた。



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