かけがえのないキミへ
綾音に『仲良いですよ』という光景を見せてなんになる?
ヤキモチなど妬いてくれないだろ?
分かってるよ。
でもちょっとだけでいいから、気にして欲しいんだ。
映画館は暗くなり、スクリーンが前へと出る。
映し出されたのは、最新の映画の予告。
俺は真っ直ぐその予告を見ていた。
でも、真っ直ぐ前を向いていても、綾音の姿が視界に入るんだ。
じゃあどうしたらいい?
その答えが分からないまま、映画が始まった。
《恋愛系》という映画のせいか、悲しい曲が流れ始めた。
スクリーンの中では主演の女優が悲しい顔を浮かべていた。
この映画の話は、《再会》をテーマにしているらしい。
ハッピーエンドは間違いないだろう。
俺はただ無感情のまま、それを見ていた。
…ちょうど終盤らへんにきたところだろうか。
右側にいた梨花からすすり泣く声が聞こえてきた。