かけがえのないキミへ


そんなことに気がつかず、俺は綾音に優しくしてしまった。


映画が終わり、エンドロールが流れる。
やっぱり最後はハッピーエンドだった。

俺の恋は、決してハッピーエンドではないだろう。
綾音に気持ちなんて伝わらない。きっと─…


エンドロールが流れている中、俺たちは立ち上がり出て行った。
ジュースとポップコーンのゴミをゴミ箱にほかる。
映画館の中が暗かったせいか、外がだいぶ明るく感じる。



『俺トイレ行ってくる』

竜也たちにこう言って俺は近くのトイレに向かった。


見せられねぇよ。
こんな姿。


トイレへと駆け込み、鏡の前に立つ。



『やっぱりな…』


やっぱり…
俺の顔が真っ赤だ。
約二時間半。
頑張ったよ、俺。


じっと鏡を見つめ、赤色がひくのをしばらく待った。



もう嫌だ。
早く帰りたい…
一人になりたい─…



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